中小企業の経営者の大きな悩みの一つに、後継者への事業承継があります。
そこで活用が進んでいるのが「事業承継税制」です。これは、一定の要件を満たすことで、贈与税や相続税の納税が猶予される制度で、円滑な事業承継を後押しするものです。しかしながら、便利な制度である反面、運用には注意が必要です。
今回は、実務で特によくある「落とし穴」をご紹介します。
実務上よくある落とし穴
1. 適用要件の確認不足
例えば、会社規模や業種、後継者の役員就任時期など、細かい条件が設定されています。これを満たしていないまま手続きを進めてしまうと、最終的に税務署から認定を受けられず、予定していた税負担の軽減ができなくなってしまいます。
2. 計画変更による認定取消
事業承継税制は承継後も一定期間、要件を守り続ける必要があります。例えば、後継者が代表を辞任したり、株式を譲渡したりすると、納税猶予が打ち切られ、猶予されていた税金に加えて利子税まで一括で納めることになります。経営環境の変化でやむを得ない場合もありますが、適用後も計画通りに運営できるか、十分なシミュレーションが大切です。
3. 書類不備や報告義務違反
税務署へ提出する届出書類や毎年の報告を怠ると、これも納税猶予の取消理由となります。特に年度末は忙しくなるため、専門家と連携し、スケジュール管理を徹底しましょう。
このように、事業承継税制は大きな節税効果を期待できる一方で、適用後も慎重な管理が求められます。失敗を防ぐためには、制度を正しく理解すること、専門家と二人三脚で進めることが何より重要です。事業承継に関するご相談・ご質問等がございましたら、弊社担当者へお尋ねください。