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  • 2025.06.18
  • Category: 経営

賃上げ税制の実務運用と「5年繰越」の活かし方

投稿者:経営サポートグループ

令和6年度の税制改正により令和7年3月31日決算から、中小企業向けの「賃上げ促進税制」が見直されました。
今回の改正では今までの条件に加えて、控除しきれなかった税額を最長5年間繰り越せる制度も新たに導入されました。法人税額の最大20%を上限として控除できるという制限はありますが、複数年にわたって節税効果を享受できる制度として注目されています。

活用時の注意点と実務上のポイント

1.初年度の申告がすべての出発点

制度の適用には、初年度の確定申告時に正しい明細書類の添付が必須です。不備や記載漏れがあると、繰越控除の資格そのものが認められません。

具体的には、以下のような資料の整備が求められます。

  • 税額控除額の算定根拠
  • 継続雇用者の給与等支給額の計算方法
  • 教育訓練費の明細 など

2.繰越控除額の管理体制を整備する

繰越控除を有効に活用するには、「いつ・いくら控除が残っているか」を正確に管理する体制が欠かせません。
控除額の記録や管理を怠ると、適用漏れや失効といったリスクが高まります。経理部門や顧問税理士と連携し、毎年の繰越残高を確実に把握しておきましょう。

3.利益見通しに基づいた活用計画を立てる

繰越期間は最長5年間ですが、その間に黒字にならなければ、控除額は失効してしまいます。
制度の恩恵を受けるには、将来的な業績見通しを踏まえた上で、計画的に節税を実行することが不可欠です。
特に、収益の変動が大きい業種では、賃上げを行うタイミングや控除額の使い方について慎重に検討する必要があります。

4.他の税額控除制度との調整

研究開発税制など、他の税額控除制度との併用を検討している場合には注意が必要です。
法人税額の控除上限は合計で20%までと定められているため、複数の制度を適用する際の順序や配分によって、節税効果が変わってきます。
各制度の適用順序についてシミュレーションを行い、最も効果的な組み合わせを検討することが重要です。

まとめ

賃上げ促進税制の繰越控除は、正しい理解と計画的な運用があれば、中小企業にとって非常に有効な節税ツールとなります。
制度の適用を受けるには、初年度からの正確な処理と、将来を見据えた継続的な管理体制が鍵です。
制度を最大限に活用するためにも、早めの準備と専門家との連携をおすすめします。

参考

中小企業庁 中小企業向け賃上げ促進税制ご利用ガイドブック