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  • 2024.03.22
  • Category: 経営

「賃上げ促進税制」令和6年4月1日以降の変更点

投稿者:経営サポートグループ

国の方針に沿った取り組みを行った会社や個人に対して、一部税金を減らすことを認める措置を「税額控除」といいます。

そのうち前年度より給与等が増加した場合に、その増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から減税できる「賃上げ促進税制」(旧所得拡大促進税制)という制度があります。
適用したことがある方も多いのではないでしょうか。

そんな賃上げ税制ですが、令和6年4月1日より制度が一部変更(新設)されます。
大企業・中堅企業・中小企業向けとそれぞれ変更点はありますが、その中でも特に皆様に関係すると思われる中小企業向けについてご説明したいと思います。

賃上げ促進税制の変更点

1. 適用対象

青色申告書を提出する中小企業者等(資本金1億円以下の法人、農業協同組合等)又は従業員1,000人以下の個人事業主

2. 適用期間

令和6年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度
(個人事業主は、令和7年から令和9年までの各年が対象)

3. 税額控除の内容

★全雇用者の給与等支給額について前年度比

① +1.5%→増加額の15%を税額控除
② +2.5%→増加額の30%を税額控除

★教育訓練費が前年度比+5% ・・・ 税額控除率を10%上乗せ
★くるみん以上、又はえるぼし二段階目以上認定 ・・・ 税額控除率を5%上乗せ

※税額控除上限額は法人税、又は所得税の20%となっています。

①、②はこれまでの制度にあったものになります。
教育訓練費はそれまでの10%から5%となり、要件が軽くなっています。
すべてを適用したとき、給与増加額の最大45%を税額控除することができます。

ここで新たに出てきた「くるみん」「えるぼし」について厚生労働省の案内より紹介します。

認定制度「くるみん」と「えるぼし」

くるみん(認定制度)

次世代育成支援対策推進法」に基づく認定制度。

一般事業主行動計画の策定・届け出を行った事業主のうち、計画に定めた目標を達成し、一定の基準を満たした企業を厚生労働大臣が「くるみん認定企業」「プラチナくるみん認定企業」「トライくるみん認定企業」として認定します。

不妊治療と仕事との両立支援の取り組む企業を認定する「プラス」認定制度も始まりました。

えるぼし(認定制度)

女性活躍推進法」に基づく認定制度。

一般事業主行動計画の策定・届け出を行った事業主のうち、女性の活躍促進のため取り組みの実施状況が優良な企業を厚生労働大臣が「えるぼし認定企業」「プラチナえるぼし認定企業」として認定します。

給与の増加に加え、「子育て」「女性活躍推進」に取り組んだ企業についても税金の面で優遇するというような追加となっています。
このうち、くるみん認定及びくるみんプラス認定については令和4年4月1日以降の基準を満たしたくるみん認定を取得した場合に限り適用可能となります。

5年間の繰越が可能に

また、今回の大きな変更点としては、賃上げを実施した年度に控除しきれなかった金額を5年間繰越できることになったことです。
これまで税額控除上限額を超えてしまったため全額を控除できなかった、または賃上げをしたが、たまたま大きな費用があり赤字決算の年になってしまった場合は、この賃上げに関する税額控除が十分に利用できていませんでした。
今回、控除しきれなかった金額の繰越が可能になったため、制度が使いやすくなっています。

注意することとしては、繰越税額控除をする事業年度において、全雇用者の給与等支給額が前年度より増加している場合に限り、適用可能であることです。
繰越したとしても、適用したい事業年度に給与が増えていなければ適用できませんのでご注意ください。

※今回紹介した内容は令和5年12月の政府決定時点のものであり、内容が変更となる可能性もあります。予めご了承ください。

5年間の控除の繰越が可能になったことで、今後適用できる機会も増えてくると思います。税金を減らす方法としてご検討していただければと思います。

参考・出典

厚生労働省 企業の人材確保・定着に役立つ3つの認定制度のご案内 (えるぼし・くるみん・ユースエール)
中小企業庁 賃上げに取り組む経営者の皆様へ~政府は、賃上げに取り組む企業・個人事業主を応援します~