経営を維持・発展させるための売上目標の立て方
令和6年10月に佐世保商工会の創業塾にて講師をさせていただきました。今回は、そこで話をしたテーマ「管理会計と資金繰り」について、お伝えしたいと思います。会計の基礎知識として役立てていただければと思います。
1.なぜ正しい会計が必要なのか
(1)経営者が会社の状況を把握するため
経営者の関心がある数字(科目)は「売上」ですが、ぜひ、経営者に関心を持って欲しい数字(科目)は「利益」です。(※本文における利益は税引後利益です。)
どんなに売上を伸ばしても、利益が出ないと会社は倒産します。利益から借入金の返済や設備投資をおこなえる「適正な利益」を出して、会社を維持・発展していかなくてはなりません。
(2)金融機関の格付けへの対応
金融機関は決算書から企業の評価をおこないます。
格付けが良ければどうなるか?
⇒金利などの融資条件が良くなります。
格付けを良くするためには?
⇒適正な利益を上げ続けることが近道です。
2.管理会計とは
会計の種類
- 財務会計=実績、外部向け
制度会計ルールに従う必要があります=どの会社もルールは一緒
- 管理会計=未来(目標)、内部向け
会社独自のルールで管理し運用していきます。
管理会計では、まず自社の経営状況を分析します。そして、「適正な利益」を出すための必要な売上目標を把握し、原価管理などをおこなっていきます。
経営者が、未来(目標)に向けて経営を管理するための会計なのです。両方の会計を活用する事で、会社はより良い方向に進むでしょう。
3.売上目標の立て方
(1)損益分岐点売上高
売上と費用が均衡(売上=費用)する売上高です。
例えば、売上100円、費用100円であれば利益は0です。当然ながら、売上-経費=利益はプラスとなる事が理想です。
<参考>
費用には2種類あります。
変動費=売上高の増減委合わせて変動する費用(原材料費や売上原価など)
固定費=売上の増減委関わらず固定的に出る費用(家賃や人件費など)
(2)資金収支分岐点売上高
入ってくるお金と出ていくお金(キャッシュフロー)が均衡する売上高です。
会計では、費用の中でもお金は出ていかないもの(減価償却費など)があります。
逆に、費用にならないのにお金がでていくもの(借入金返済や納税、設備投資など)があります。こちらは利益から捻出する必要があります。
これらの費用を考慮した、経営に必要な最低限の売上高が資金収支分岐点売上高となります。
<参考>
減価償却費とは、まとまった金額の資産を購入した際に、毎年一定の価値が減少する資産として捉え、減少していく価値を毎年費用として計上するもの。
前述の損益分岐点売上高を例にすると、
売上100円、費用100円、利益0円、減価償却費10円(費用にはなるがお金はでていかない)借入金返済10円、納税10円(費用にならないがお金がでていく)
利益0+減価償却費10-(借入金返済10+納税10)=△10
この損益分岐点売上高ではお金が足りず、経営ができない状況です。計画時点でこれが把握できれば、より売上をあげて利益を出せるよう改善します。
売上115円、費用105円、利益10円
利益10+減価償却費10-(借入金返済10+納税10)=0
資金収支がプラスマイナス0となり、なんとか経営継続が可能となりました。安心できる資金繰りには、必要資金額から逆算した売上計画が必要です。
(3)損益分岐点を改善する3つの方法
- 変動費を下げる・・・原材料費や売上原価などを下げる。
- 固定費を下げる・・・家賃、人件費、保険などの適正化を図る。
- 販売単価を上げる・・・付加価値の高い商品・サービスを提供する。
加えて、計画的な設備投資と借入計画によって、資金収支分岐点も改善することができます。
4.あんしん経営をしていくために
あんしん経営の基礎
- 自社を知る・・・商品別分析(利幅、シェアなど)はできていますか?
損益分岐点売上高はどれぐらいですか?
利益から出ていくお金は把握できていますか?
- 目標を立てる・・・目標は明確(数字)になっていますか?
目標は間違っていませんか?
具体的に何をやっていきますか?
- PDCAサイクル・・・継続できる体制はできていますか?
軌道修正できる場(会議など)は作られていますか?
皆さん、あんしん経営の基礎はいかがでしょうか。
まずは、安心した資金繰りで経営が発展していけるよう、適正な利益を出すために必要な売上目標と、行動計画の立案が不可欠です。そして、管理会計を用いて、目標に対する現状の数字と行動を定期的に管理し、必要があれば都度軌道修正をおこなう事も必要となります。
あんしん経営の為に、やるべき事は少し増えるかもしれませんが、ご参考にしていただき、あんしん経営をぜひ実現してください。
最後に・・・
弊社では、あんしん経営実現をサポートするサービスを提供しています。
- 将軍の日…中期5ヶ年計画立案セミナー
- MAS監査…目標達成に向けた数値計画・行動計画の管理を支援する経営サポート
皆さんの経営にお役に立てるサービスですので、お気軽にご相談ください。