実際に相続税を計算するとき、いったいどんな財産に相続税がかかるのか、そしてその財産の価格はいくらなのか、という事が分からなければ相続税は算出できません。
「相続財産」とは、被相続人の一身に属するもの全てを指します。土地、建物等の不動産を始め、現金、預貯金、貴金属、宝石類、書画・骨董品、株券等の有価証券、ゴルフ会員券、時計、車、生命保険等お金に換算出来るものは全て相続財産とみなされます。
その相続財産の評価額は、時価で評価することとされています。
預貯金(定期・普通)
預貯金(定期・普通)は、相続開始日(被相続人が亡くなった日)時点の残高が評価額となります。外貨預金の場合は、日本円への換算が必要です。
建物
建物は固定資産税評価額を使って評価します。自宅なら、固定資産税評価額がそのまま評価額になります。固定資産税評価額は市町村役場から送られてくる納税通知書により確認できます。
人に貸している建物は、借りている人に借家権が生じるため、一律30%の借家権割合を差し引いて評価します。
相続開始時に建物が建設中という場合は、まだ固定資産税評価額がないため、それまで建築にかかった費用の70%で評価します。
土地
土地の評価の方法には次の4つがあります。同じ土地でも評価によって時価に差があり、どのように利用されているかによっても評価額は違ってきます。
- 取引価格(売買価額・実勢価額)
- 地価公示価格(標準価額)
- 相続税評価額(路線価)
- 固定資産税評価額
取引価額と公示価額はほぼ同額です。相続税評価額は公示価格の80%とされており、路線価方式や倍率方式の計算方法を用います。固定資産税評価額は公示価格の70%程です。
宅地には市街地と市街地以外(郊外や農村部)があり、市街地にある宅地の評価方法は路線価方式、市街地以外の地域にある宅地の評価方法は倍率方式で評価します。
路線価方式は、道路ごとにつけられた1㎡当たりの路線価に宅地面積(地積)を掛けて計算します。路線価は、国税庁が毎年7月に発表する路線価図で確認できます。
倍率方式は、固定資産税評価額に国税庁が定めた倍率を掛けて計算します。
生命保険金
生命保険金(亡くなった方が被保険者)は、受け取り方が一時金か定期金かによって異なりますが、基本的に受け取る金額が評価額です。但し、生命保険金には、「500万円×相続人の数」の非課税枠があり、この金額までは相続税がかかりません。
生命保険契約の権利を相続した場合(被相続人=契約者(負担者)、被保険者=被相続人以外)は、解約返戻金相当額を評価額として相続税が課せられます。この場合は非課税枠が使えません。
上場株式
上場株式の評価方法には次の4つがあり、最も低い価額で評価します。
- 被相続人が死亡した日の終値
- 被相続人が死亡した月の、毎日の終値の月間平均額
- 被相続人が死亡した月の、前月の毎日の終値の月間平均額
- 被相続人が死亡した月の、前々月の毎日の終値の月間平均額
相場の運不運をなくすために、最も低い価格を選べるように幅を持たせています。
書画・骨董品
書画・骨董品の評価は売買実例価額や精通者意見価額等を参考にして評価額を決めます。市場における実際の取引価額やその財産に関する専門家の鑑定結果等の価額を参考に評価します。
ゴルフ会員権
ゴルフ会員権は形態によって3つの評価方法に区分されます。
- 株主でなければ会員とされないもの
- 株主であるとともに預託金を支払わなければ会員になれないもの
- 預託金を支払わなければ会員になれないもの
さらに、取引相場がある会員権とない会員権に分かれますが、ゴルフ会員権は通常、取引相場のあるものがほとんどなので、取引価額の70%として評価します。
家庭用財産
家庭用財産(自動車・オートバイ・船舶等)の評価で1個(1組)5万円以下は、1つひとつ評価するのは煩雑であるため、おおよその価値を見積もって「一括○○円」として評価する事が認められています。
財産の種類による評価額の計算
【参考文献】「相続と贈与がわかる本」(監修:桒原亜矢子 発行所:成美堂出版)