社会福祉法人とは、社会福祉事業を行うことを目的として設立された法人です。その設立や事業の開始においては、定款に社会福祉法で規定する事項を定めたり、所轄庁の認可を受ける等の手続きが必要となります。株式会社などのような営利法人とは違い、公益性の高い非営利法人であるため、法人税等の税制の優遇措置を受けることができる法人です。
1.社会福祉法人の法人税
このような社会福祉法人は、法人税法上「公益法人等」に該当するため、法人税は原則非課税とされています。しかし社会福祉事業や公益事業であっても法人税法上の収益事業に該当する場合は納税義務が生じます。法人税法上の収益事業として、物品販売事業、物品貸付業、製造業、印刷業、旅館業、料理店業その他の飲食店業 などがあげられます。
例えば、社会福祉事業として特別養護老人ホームを運営し、施設内で介護保険事業である①指定介護老人福祉施設(特養)、②指定短期入所介護(ショート)、③指定通所介護(デイサービス)、④指定居宅介護支援及び⑤指定福祉用具貸与の事業を実施していたとします。
この場合、法人税の課税対象になる事業はあるのでしょうか?答えは「⑤指定福祉用具貸与の事業」のみ課税対象です。法人税法上の収益事業である物品貸付業に該当するためです。①~④は医療保健業に該当するため、法人税の課税対象とはなりません。
2.社会福祉法人の消費税
消費税においては、「介護保険サービス等に係る資産の譲渡等、社会福祉事業等に係る資産の譲渡等」は、消費税の性格になじまないもの及び社会政策上の理由により、消費税法上の非課税売上とされています。つまり、非収益事業から生じた所得については法人税は課税されませんが、非収益事業に属する資産の譲渡等を行った場合でも「国内における課税資産の譲渡等」であるときは消費税の課税対象となります。課税事業者の判定は、株式会社等と同様に、基準期間や特定期間等で判定されます。
上記「1.社会福祉法人と法人税」であげた介護保険事業に係る資産の譲渡等については、そのほとんどが消費税は非課税とされますが、一部の収入については消費税が課税されます。
具体的に見ていくと、①指定介護老人福祉施設の場合、サービス提供による介護報酬や利用者負担については介護保険内のサービスのため消費税は非課税とされています。しかし利用者自ら希望した「特別な居室や食事」は介護保険外となり消費税の課税売上(介護保険サービスとの差額部分)となります。
また⑤指定福祉用具貸与については、「身体障害者用物品」に該当するもののみ消費税が非課税とされ、床ずれ防止用具や認知症老人徘徊感知機器は消費税の課税対象となります。
このように法人税は事業ごとの課非判断になりますが、消費税はさらに細分化され提供するサービス内容により課非判断となります。
3.最後に
法人税や消費税以外の優遇措置として、固定資産税においても社会福祉法人がその社会福祉事業の用に供する固定資産については非課税となります。(ただし社会福祉事業の目的以外に使用するときは課税される場合があります。)
社会福祉法人は公益法人等という位置づけのため、税制の優遇措置を受けることができますが、その事業内容やサービス内容は多岐にわたります。社会福祉法人だから税金はかからないと思われがちですが、事業やサービス内容ごとに課税・非課税の判断基準は様々です。もし気になられる法人様は税理士事務所にお尋ねいただければと思います。
参考:Q&Aでわかる社会福祉法人の税務
(著者:田中正明、発行所:税務研究会出版局、発売日:2021/3/24)