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  • 2023.08.30
  • Category: 経理

不動産賃貸契約のインボイス対応について

投稿者:経営サポートグループ

 令和5年10月1日からインボイス制度が始まります。多くの事業所に関係がある一方、いまだに理解が進んでいないものに、「不動産賃貸契約」に関するインボイス対応があります。

 一般的に、不動産賃貸契約書は契約の際に作成されますが、ほとんどのケースでは支払いは毎月決められた預金口座から自動引き落としになりますし、当初契約期間が経過したあとは自動更新になることが多く、契約の見直しをしたり、契約書を作り直すということはほとんどありません。
 これまでであれば、それで不都合が生じるようなケースはあまりなかったのですが、インボイス制度が始まるにあたり、支払った消費税を差し引くためには一定の対応をすることが求められます。

適格請求書の保存、その具体的な対応方法

 このような契約書に基づき代金決済が行われ、取引の都度、領収書や請求書が発行されないケースでも、支払った消費税を差し引くためには原則として適格請求書(以下インボイス)の保存が必要です。具体的に次の対応については、令和5年7月31日に国税庁から発表された「お問い合わせの多いご質問 問13」が参考になります。

問13の内容は以下のとおりです。

当社は、事務所を賃借しており、口座振替により家賃を支払っています。不動産賃貸契約書は作成していますが、請求書や領収書の交付は受けていません。このような場合、請求書等の保存要件を満たすためにはどうすればよいですか。

これに対して次のような解決策が提示されています。

①令和5年9月30日以前からの契約について

  • 契約書に登録番号等のインボイスとして必要な事項の記載が不足している場合には、別途、登録番号等の記載が不足していた事項の通知を受け、契約書とともに保存していれば差し支えありません。

[補足]
つまり、相手方(貸主)から登録番号等の記載が足りていなかった事項、具体的には登録番号、登録年月日、賃料(適用税率の追記等)、どの書類をインボイスとして扱うか(当初契約書+当文書(覚書)+通帳の支払い記録など)について通知文書を作成してもらい、契約書と保存しておけば大丈夫ということです。

②令和5年10月1日以降の契約について

  • インボイスは、一定期間の取引をまとめて交付することもできますので、相手方(貸主)から一定期間の賃借料についてのインボイス交付を受け、それを保存することによる対応も可能です。
  • インボイスとして必要な記載事項は、1つの書類だけで全てが記載されている必要はなく、複数の書類で要件を満たせば、それら書類全体でインボイスの要件を満たすことになりますので、契約書にインボイスとして必要な記載事項の一部が記載されており、実際に取引を行った事実を客観的に示す書類とともに保存しておけば、経費に対する消費税を差し引くための要件を満たすことになります。
  • 問13の場合には、インボイスの記載事項の一部(例えば、課税資産の譲渡等の年月日以外の内容)が記載された契約書とともに支払い実績が記帳された通帳を併せて保存することにより、経費に対する消費税を差し引くことができる要件を満たすことになります。
  • 口座振込により家賃を支払う場合も、インボイスの記載事項の一部が記載された契約書とともに、銀行が発行した振込金受取書を保存することにより、請求書等の保存があるものとして、経費に対する消費税を差し引くための要件を満たすこととなります。

 なお、このような取引の都度、請求書等が発行されない取引については、取引の途中で取引の相手方(貸主)がインボイス発行事業者でなくなる場合も考えられます。
 また、その連絡がない場合にはその事実を把握することは困難です。そのため、必要に応じて「国税庁適格請求書発行事業者公表サイト」で相手方が適格請求書発行事業者かを確認する必要がありますので、その点にはご注意ください。

通知文書の例

 最後に、令和5年9月30日以前の契約の場合は、以下のような文書を通知することで、インボイスの要件を満たすことができます(上記②の2つ目の点の部分です)。ぜひご活用ください。

ダウンロードの際は必ず免責事項についてご確認ください。

PDFを編集する方法を「【無料】PDFを編集する方法」でご案内しています。
合わせてご覧ください。

参考

国税庁 お問合せの多いご質問(令和5年7月31日掲載)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice_faq.htm