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  • 2025.10.22
  • Category: 相続・事業承継

相続の前に確認したい「使用貸借」―親族の土地を使っているときの注意点

投稿者:相続事業承継グループ

土地や建物を「無償で貸している」「家族にただで使わせている」というケースは少なくありません。このような関係を法律上では「使用貸借」と呼びます。
例えば、親の土地に子どもが家を建てて住んでいる、兄弟の土地を借りて駐車場として使っているといったケースです。
相続が発生したとき、この「使用貸借」があることで思わぬトラブルや課税の問題が起きることがあります。ここでは、対策と相続時の注意点をわかりやすく解説いたします。

1.貸主・借主が死亡した場合の使用貸借の取扱い

使用貸借は貸主と借主の信頼関係のもとで成り立つ契約です。
そのため、借主が死亡した時点で契約は終了します。(民法597条)
しかし、契約書等で死亡後も使用できる旨を交わしていた場合や、借主の家族が引き続き住むことを前提に建物を建てていた場合など、必ずしも契約が終了となるわけではありません。

一方で、貸主が亡くなった場合には使用貸借契約は終了せず、その地位は相続人へ承継されます。この点については契約内容や家族間の関係によって解釈が変わるため、注意が必要です。

2.相続税評価のポイント

使用貸借の土地は、通常の貸地(地代を取っている土地)とは違い、貸している人の相続税評価が下がらないのが特徴です。

例えば、

  • 地代をもらっていない(無償で貸している)
  • 地代をもらっているが、固定資産税程度の金額である

といった場合は、「自用地(自分で使っている土地)」と同じ扱いになります。
そのため、相続税評価が賃貸している土地と比べて高くなることがあります。

一方で、借りている側が土地の上に家を建てている場合、その所有者には「土地の利用権」はありません。あくまで貸主の好意によって使用を認められている状態です。

3.相続後に揉めやすいポイント

相続前から、兄弟のうち一人だけが無償で土地を使っていると、他の相続人から「公平じゃない」「地代を払うべきだ」といった不満が出ることがあります。

このようなトラブルを防ぐには、

  • 生前に契約書を作っておく
  • 地代や使用料を明確にしておく
  • 遺言書で意向を残しておく

といった対策が有効です。

4.相続発生後にすべきこと

相続が発生したあとに使用貸借の土地がある場合は、以下の点を整理しましょう。

  • 誰が貸主・借主だったのかを確認する
  • 土地・建物の登記内容を確認する
  • 相続人全員で今後の利用方針を話し合う
  • 可能であれば契約書を作り直す(賃貸借や贈与への切り替えも検討)

5.まとめ

使用貸借の土地は、「無償だから問題ない」と思われがちですが、相続時には評価や取り扱いが大きく影響するポイントです。
特に親族間での使用貸借は感情面のトラブルにも発展しやすいため、「生前に整理」「相続後は専門家と確認」を意識しておくと安心です。

内容等ご不明な点などございましたら、弊社担当者までお尋ねください。

参考

国税庁 親の土地に子供が家を建てたとき(No.4552)
国税庁 使用貸借に係る土地についての相続税及び贈与税の取扱いについて