今年も残りわずかとなり、確定申告の季節が近づいてきました。
今回は不動産(土地・建物)を譲渡(売却)した際の所得税についてお伝えします。一生のうちに何度もある話ではありませんが、特異事項として普段の申告と違い必要な書類が分からない、計算を誤ると税金に多額の影響を及ぼす可能性がある等の点が挙げられます。
土地建物等の譲渡所得の概要は、以下のとおりです。
1.譲渡所得、所得税の計算
譲渡所得は分離課税のため、事業・不動産・給与所得等の総合課税とは別計算します。赤字になっても総合課税所得と損益通算はできません。
分離譲渡所得は「長期」と「短期」に区分されます(重要)。譲渡した年の1月1日現在で所有期間が5年超は長期譲渡所得、5年以下は短期譲渡所得になります。何故この点が重要かというと、長期は税率20%、短期は税率39%(何れも含住民税)と税率がほぼ倍になるからです。この点を知らなかったため、あと数日契約を遅らせれば税負担が半分で済んだのにということもあり得ます。注意点は所有期間が5年超ではなく、譲渡した年の1月1日現在での判断による点です(令和6年分の場合、平成30年12月31日以前に取得したものが長期譲渡所得に該当)。
なお、相続により取得した土地建物は、被相続人の取得年月日を取得日とします。
その他、注意点(誤り易い事項)として以下の例が挙げられます。
- 譲渡日
原則として引渡しのあった日(代金決済日より後にはならない)
契約書の日(引渡しのあった日との選択可、但し申告後の変更は不可) - 譲渡価格
未経過固定資産税等相当額は譲渡価格として計算
時価と著しく乖離(高過ぎる、安過ぎる)している場合(特に親族間、グループ法人との取引は注意、ケースによって思わぬ課税が発生する) - 取得費
実際に取得に要した金額、設備費、改良費(除維持管理費)
概算取得費(実際の取得費等が不明の場合は譲渡価格の5%)
事業用建物は減価償却累計額を差引後、事業外建物も償却費相当額を差引後
贈与や相続、遺贈の際の登記費用は控除可(概算取得費を適用しない場合) - 譲渡費用
譲渡のために直接要した費用、譲渡価格を増加させるため譲渡に際して支出した費用
例)契約書印紙代、仲介手数料、実測費用、立退料、取壊し費用及び除却損(譲渡資産の修繕費、固定資産税、維持管理費は除く)
取壊し費用は譲渡費用と記載しましたが、単に老朽化による事故未然防止目的など、ケースによっては該当しない場合もあります。具体的には取壊しから譲渡までの期間や、取壊時点での譲渡予定等の具体的資料で判断します。
なお、譲渡直前のハウスクリーニングや庭除草は譲渡価格を増価させる支出と考えられそうですが、当局は通常の維持管理費として判断しています。
2.土地建物等の譲渡所得の税率及び特別控除
出典
税理士会研修資料(福岡国税局作成)