中小企業の経営において、「交際費」と「福利厚生費」の区分は、税務処理や調査対応に直結する重要なテーマです。誤った処理をしてしまうと、税務調査で否認されたり、従業員への給与課税とされてしまうリスクもあります。
今回は、2025年8月時点の最新制度を踏まえ、実務で役立つポイントと注意点を整理しました。
1.交際費と福利厚生費の違いとは?
まずは、混同しやすい「交際費」と「福利厚生費」の違いを整理しておきましょう。
◎交際費とは
取引先や仕入先など、社外との関係を円滑にするための支出です。
典型例:
- 取引先との懇親会費用
- 年末のカレンダーやお歳暮の贈答
- ゴルフコンペの費用(取引先と一緒に参加する場合)
◎福利厚生費とは
従業員の福利厚生を目的とした支出で、社内を対象とするものです。
公平性を保つことが原則となります。
典型例:
- 社員旅行
- 勤務中の弁当支給(一定条件あり)
- 社内レクリエーション(ボウリング大会など)
2.交際費の損金算入枠を賢く活用する
中小企業(資本金1億円以下の法人)は、一定の範囲で交際費を損金(税務上の経費)に算入できます。
2025年度の制度概要
- 年間800万円までの交際費が損金算入可能
- または、接待飲食費の50%については上限なく損金算入可能
- さらに、1人あたり10,000円以下の飲食費は全額損金算入可能
👉 参考:国税庁タックスアンサー
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5265.htm
実務での留意点
- 領収書と出席者の記録を残すこと
「誰と、何の目的で」支出したかを明確に記録する必要があります。 - 社長個人の支出との区別
社長の私的飲食と判断されると損金不算入となります。交際目的の正当性を説明できるよう準備しておきましょう。
3.福利厚生費にするためのポイントは“公平性”
福利厚生費と認められるためには、「全従業員を対象」とすることが重要です。
社員旅行・懇親会の取扱い
- 旅行の場合:4泊5日以内で、参加率が50%以上であること
- 忘年会・暑気払いなども福利厚生費に該当。ただし役員のみで行う場合は認められません
👉 参考:国税庁タックスアンサー
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2603.htm
食事支給の留意点
- 勤務中の食事を会社が支給する場合、従業員が半額以上を負担すれば課税対象外
- 会社負担額は、従業員1人あたり月額3,500円までが目安
- 全額会社負担にするには、宿直など特別な事情が必要
👉 参考:国税庁タックスアンサー
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2594.htm
4.交際費と福利厚生費、どちらで処理するか迷ったときは?
同じような支出でも、どちらで処理するかによって税務上の扱いは変わります。判断に迷う場合は次の基準を参考にしましょう。
| 判定基準 | 交際費 | 福利厚生費 |
| 対象者 | 社外(取引先など) | 社内(従業員) |
| 目的 | 営業・取引関係の強化 | 従業員の福利向上 |
| 公平性 | 必須ではない | 全従業員を対象とすることが原則 |
例:年末に配るお歳暮は交際費ですが、社員全員に支給する弁当や社内レクリエーションは福利厚生費に該当します。
5.税務調査で指摘を受けないために
税務調査では、交際費・福利厚生費の使い方に特に注目が集まります。
次の点を心がけましょう。
- 領収書の裏に「使途」を記載
「誰と、何の目的で、どこで、いくら」支出したのかを明確にしておくと安心です。 - 議事録や案内状の保管
社員旅行や社内レクリエーションは、開催案内、参加名簿、写真などを残しておくことで説得力が高まります。
6.まとめ
交際費・福利厚生費は、適切に活用すれば税負担を軽減しつつ、社外・社内の関係を円滑にする有効な手段です。しかし、区分を誤ったり証拠資料が不十分な場合、税務調査で否認されるリスクがあります。2025年8月現在の制度を踏まえ、正しい区分と書類管理を行い、賢く経費処理を進めましょう。
弊社では、交際費・福利厚生費の判断、証拠書類の整備、税務調査対応などについてもサポートしております。実務でお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。